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サステナブルな“織都”──SILKKI、mimimo

「生産者の近くで仕事ができてうらやましい」。服づくりにかかわる人は、桐生を評してそう口を揃える。染色から縫製に至るまで、技術のすべてが小さな街に集まっているからだ。この地を目指す若いデザイナーやパタンナーもあとを絶たない。


そんな環境をいかして、サステナブルな素材や工程にこだわるブランドがあらわれてきた。環境負荷を減らし、持続可能性を追求する“織都”のいまを眺めてみよう。


持続可能な服作り


「シルクを日常に」。そんな願いを込めるのは、2020年にライフスタイルブランド「SILKKI」を立ち上げたテキスタイルデザイナー・川上由綺さんだ。繊維の街に育まれた伝統と技術をいかして、サステナブルな服づくりに挑戦している。



川上さんが所属する桐生整染商事の工房には、ドビー織機が立ち並んでいる。

ドビー織機は生地などの織物を織る際に、縦糸を上下に開口させる装置の入った織機。直線的でシンプルなデザインの織物を得意としている。

職人のもとで大きな音を立てて稼働するその織機から、うつくしい生地がゆっくりと、やわらかに織られてゆく。その生産過程は、環境負荷を減らす工夫に満ちている。


SILKKIは、ほとんどのアイテムに国産の生地を使い、さらに半径3km以内の工場で服づくりを完結させることで、輸送時のCO2排出量を削減。包装もプラスチックを使わず、紙やリボンでかんたんに包んでいる。「生産」という営みにおける負の要素から、目をそらさずに向き合っている。



ていねいに縫製することで長く着続けられるSILKKIは、生産者にとってだけではなく、消費者に

とってもサステナブルなブランドだ。やさしくシンプルな装いで、時代・世代・体型を問わずに、誰もが心地よく着こなせる服を目指してデザインしているという。



どうしてシルクという素材にこだわるのだろうか。川上さんは、自身が身体の不調に悩まされていたとき、絹のもつ保温性と放湿性に驚かされたという原体験を話してくれた。「シルクはわたしたちの身体を冷えから守り、いつでもちょうどいい体温を保ってくれるんです。生き物の繭ならではの力が感じられますよね」。


──「ものが溢れる世界でわざわざ服を作るからには、きちんと考えて作りたいんです」。環境にとっても身体にとってもやさしいシルクのブランドが、いま日本屈指の絹織物の産地から育っている。



端材に価値を吹き込む


サステナビリティに向き合うブランドはほかにもある。mimimoは、Tシャツやカットソーなどの染色過程で生じる“耳”と呼ばれる端材を捨てずに再生し、手芸用の編み糸として生まれ変わらせたアップサイクル・ブランドだ。カラフルな色と極太の糸がポップで、手芸好きから初心者まで人気を集めている。




mimimoを手がける土田産業は、創業100年を超える老舗。この地で染色をいとなむなかで、有害物質を使わずに染め上げる技術に早くから取り組み、服を長く使い続けるための染め替えサービス「Re:color」も立ち上げ。繊維産業と環境負荷の関係に気を配り続けてきた。


mimimoの店舗は、反物の倉庫をリノベーションしてつくられている。天井が高く、開放的で明るい雰囲気の店内には、さまざまな色の編み糸が並ぶ。編み糸は土田産業の自社工場から出る端材をいかしてつくられるため、訪れるタイミングによって色の種類が変わるところも楽しい。また、ボックスやマット、プランターカバーといったプロダクトは、スタッフの手作りによるもの。極太の糸をかぎ針で編み込み、重厚感のある商品に仕上げている。


ここでは、店も商品も、古くなったもの、いらないものに新しい価値が吹き込まれ、新たな循環が生まれているのだ。




──原材料を輸送し、糸を紡ぐ。染色して、生地を編み、織り、そして縫製する……服を作るという仕事は一連の過程において、少なからず環境負荷がかかったり、廃棄物が出たりしてしまう。SILKKIやmimimoといったブランドは、こうした課題に向き合い、サステナブルな服づくりを提案している。消費されるだけではない、繊維産業をリードし続ける街の現在進行形がここにある。


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