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桐生で愛され続ける、たしかな審美眼に選ばれた服と、心地よい人と空間「st company」

ファッションの街・桐生で愛され続けるセレクトショップ「st company」。多彩な商品と、そこで働く人たち、そしてそれらを包む空間のすべてが輝いていた。

本町六丁目のアーケードを南へ歩き切った交差点をぐるりと回ると、真っ白でスタイリッシュな建物が目に飛び込んでくる。セレクトショップ「st company」。石段を上り前庭を抜

けて店内に入ると、素敵な笑顔と洋服たちに出迎えられる。



店内には多彩なブランドの商品が並ぶ。桐生出身デザイナーによる「HYKE」や、「3.1 Phillip Lim」のような世界的ハイブランドはもちろん、徳島県鳴門市のうつわブランド「SUEKI CERAMICS」のようなクラフトや、日本発のアウトドアブランド「and wander」など。スタイルの「今」に触れられる、そんな空間が広がっている。




オーナーの環敏夫さんは、桐生で40年以上セレクトショップを営んできた。桐生駅近くに構えた「PENNYRAIN」から、名前を変えて現在の店舗に移転したのは2018年春のこと。「この建物がいろいろなことを教えてくれました」と環さんは話す。




「もともと和菓子屋さんの入っていた建物なんですが、長いことシャッターが閉じられていました。不動産屋さんに紹介してもらって中に入ったとき、ここだ!と思ったんです。」

建物の躯体だけを残して大胆にリノベーション工事を行った。3階建ての本館と2階建ての別館が交わった開放的な空間。「NEWLAND」や「Dover Street Market」を手がけた建築家・山本和豊氏が設計に携わった。

それぞれの部屋はブランドごとに商品ディスプレイが作り込まれ、セレクトに合わせた世界観を演出する。遊び心とセンスのあふれる場所作りが、服を選ぶことの楽しさをさらに高めてくる。



すべての人にとっての、居心地の良い空間


店を訪れた人が口をそろえるのが、スタッフの接客の心地よさだ。たしかな商品知識と、丁寧で暖かい会話。ファッションに携わる一員としての誇りを感じる。

「接客スタイルはお店の方針によって違うので、うちのやり方が正解だとは思っていません。

お店に来られる方は郵便配達の方でも訪問販売の方でもすべてお客さまとして接します。

このスタンスは崩さないようにずっと続けてきました。

うちには高校生や大学生のお客さまも来てくれます。恋人へのプレゼントを選びに来た学生さんに『つまらないものを高く売りつけられた』なんてこと思わせてはいけないんです。人によってお金の価値観は違いますから、どんな方のどんなお買い物に対しても、後悔させないような接客をしていたい」たしかな審美眼で選ばれたモノと、センスよく演出された空間、そして気持ちのよい接客。

これらがすべて揃った体験は、都心でもなかなか出会えないかもしれない。



st companyは従業員への教育だけでなく福利厚生も大切にしている。

「結婚や出産をきっかけに辞めたスタッフが、みんな今度はお客さんになってくれるんです。嬉しいですよね」

地元客からも従業員からも愛されるst company。話を聞いているうちに、環さんの魅力にどんどん引き込まれていく。



「ほんの10年くらい前までは嫌なワンマン社長だったんです。60歳過ぎたころでしょうか、人のありがたみというものに改めて気付きました。特に、この場所をみんなと作りながら学んだことはたくさんあります。自分の器の小ささも、周りの人たちへの感謝も。この建物には大切なことを教えてもらいました。」



40年以上ファッションの最前線を歩み続けてきた環さんがたどり着いたこの場所を、はるばる遠方から訪れる人も多い。東京の百貨店から出店依頼を受けることも増えている。

「本当にいろいろな人たちから支持していただいて、今があります。自分の力なんて微々たるものですよ。周りの人に慕われているというのは正直あまりピンとこないんだけど、それがいいのかもしれませんね。みんなからは親父みたいに思われてるんじゃないかな」



「新型コロナウイルスの影響が広がり始めた時期は、スタッフも自分も不安になっていました。そんなとき、うちの奥さんが一言『お父さんの出番だよ』と言ってくれて。次の日、みんなを集めて『俺がみんなの不安を取り除けるように頑張るからな』って話したんです。親父ですからね。そうしたら、うちの子たちみんな元気になっちゃって、お店にも活気が戻ってきたんです。自分にできることって、そのくらいのものなんですよ」



ファッションの街・桐生で愛され続けるセレクトショップ「st company」。多彩な商品と、そこで働く人たち、そしてそれらを包む空間のすべてが輝いていた。









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