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CRAFTS & CULTURE

クラフトのいまを更新し続ける

桐生の「看板商品」を創り出す

「桐生はもともと志のある若い職人が集まってできた街なんだ。受注生産だけじゃなくって、自分たちで商品をつくって盛り上げなきゃね」。そう意気込むのは、刺繍のアクセサリーブランド「000(トリプル・オゥ)」を手がける株式会社笠盛代表・笠原康利さん。

笠盛は1877年から続く長い伝統を持つ会社だが、布で宝飾品を再現した斬新で端正なアクセサリーによって近年注目を集め、2009年にはパリの展示会へ出展するほどに。現在では職人を志す若者が東京からも集まり、最先端の技術を磨いている。

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笠原さんの言うとおり、桐生は「日本の機どころ」として名を馳せた織物の一大産地。高い技術が評価され、世界的な著名ブランドの生地製造に関わる生産者も多い。しかし、それに満足せず自社ブランドを育てるのが桐生のスタイルだ。

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日常を飾る

この街のクラフト・カルチャーは、生産者だけのものではない。セレクトショップ「st company」は、前身の「ペニーレイン」からあわせて、市内で40年以上愛されてきた。取り扱うブランドは、桐生出身のHYKE(ハイク)をはじめ、FACETASM(ファセッタズム)やCOSMIC WONDER(コズミックワンダー )、ダブレット(doublet)といった選りすぐり。2019年に渋谷パルコがリニューアルオープンした際にはポップアップストアを出展するなど、市外でもそのセンスは高い評価を受けている。〈dessence〉の山本和豊さんが設計した店舗は、空き家となっていた和菓子屋の工房をリノベーションし

たユニークな建築。もともと二つだった建物を屋上の橋でつなぎ、3層と2層が立体的に交わっている。採光性が高く、日光の差し込む中庭で穏やかな時間を過ごしながらショッピングを楽しめる。フリーマーケットやポップアップストア、展示などのイベントも頻繁に行われており、桐生の暮らしを飾っている。

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厳選された「良いもの」が並ぶショップだが、お高くとまってはいない。お客さんと店員の距離が近く、どんな人であっても居心地がいい。40年間店を率いる社長・環敏夫さんは、デザイナーやブランドとの関係づくりからバイイング、店舗での販売に至るまで、あたたかい人と人とのつながりとコミュニティを大切にしているという。

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そんな環さんの遊び心の象徴とも言えるのが、2階のカフェで食べられる「アイスまんじゅう」。昔懐かしい桐生の氷菓で、キュートなデザインに思わず微笑んでしまうだろう。

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街の日常にしっかり根づきながら、先鋭的な価値観を提示し続ける。これまでになかったセレクトショップのありかたがst companyにはある。

スタイルを伝える

桐生のクラフトとデザインが一堂に会するのが桐生ファッション・ウィークだ。2020年こそコロナ禍で中止になってしまったものの、毎年秋に開催されている。一週間のお祭りの間、新旧文化のステークホルダーたちが手を取り合い、服飾文化が盛んな街らしい催しをはじめ、伝統工芸、音楽、食、アートの出展が行われる。開催に合わせて近隣の大学構内で開かれる「クラシックカーフェスティバル」も印象的だ。300台近くの旧車が立ち並ぶ本イベントは、関東圏トップクラスと言われる会場のひとつである「桐生さくらや」の店舗内にある『桐生織塾』は、桐生市で生まれ、イッセイ・ミヤケやコム・デ・ギャルソンのコレクションにも関わった故・新井淳一氏の手掛けたテキスタイルが飾られる。

クリエイティブに対するリスペクトは本物。ユースカルチャーとしてのファッションを超えて老若男女がひとつになる、桐生らしいフェスティバルだ。

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桐生のカルチャーを継ぐ

そんな桐生には、近年多くのクリエイターが移住してきている。たとえば、ともにファッションデザイナーの和崎拓人さん、里緒さん夫妻。これまで都心で活躍してきたふたりだが、産地とのつながりを深めて質の高いものづくりがしたい、と移住を決めた。それぞれ独自のブランドを持っているが、多様な繊維技術を持ち、服づくりに繊維の生産過程から関わることができる桐生で仕事をしたいという思いは共通だった。

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そんな夫妻が運営する「ふふふ」は、大切な制作拠点でもあり、居場所でもある。開放的なガラス張り空間のうち、半分は衣服をつくる場所だが、もう半分は500種類以上のボードゲームが遊べるボードゲームカフェになっている。ふたりがファッションアトリエとして制作を行うことに加え、ものを「作る」こと、文化を「学ぶ」こと、そして世代を超えて「遊ぶ」ことが楽しめる。

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ふたりは、もともと桐生出身というわけではない。この地に育まれるクラフトとデザインのカルチャーに惹かれてやってきたのだ。1,300年前に職人たちが集まってつくられた街には、いまもクリエイターがいまも集う。桐生のクラフトマンシップは、時代にあわせてかたちを変えながら、脈々と息づいている。

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