藍工房 正田
循環する染めの世界。自然と向き合い、丁寧に続けるものづくりの姿──藍工房正田
住所
群馬県桐生市境野町1275-7
営業時間
10:00-16:00
営業期間
随時(スケジュールによって) ※ 要電話予約
料金
見学300円 体験1500円(材料費別途)
内容
染め見学・体験
HP
連絡先
0277-44-5797
「職人気質な父の背中を見て、試行錯誤してきたんですよ」そう語るのは、藍工房正田の正田智恵さん。藍染めや草木染めを手がける正田さんは、多色染めの手法にくわえて、桐生の伝統技・絞りを受け継ぐ。
工房を訪れると、暖かく迎え入れてくださり「こうやって話すことで伝えておきたいんです」と、その技術を丁寧に教えてくれた。
手間ひまを惜しまないから生まれる質感
藍染めは、オールマイティに様々なものを染めることができる。手間ひまを惜しまなければ色落ちが少なく、摩擦にも強いところが特徴だ。正田さんはハンカチ1枚でも最低10回は染めるという。
一方で、草木染めは発色のバリエーションが魅力。その効果が一番感じられるのは絹を染めるときだという。実際に正田さんが染めた絹のスカーフを手に取ると、優美な色味はとても上品で、自然ならではの温もりを感じられた。
正田さんが継承する桐生の伝統技・絞りは、祖父の代からのもの。なかでも「突き出し絞り」と呼ばれる技術は素晴らしい。布にはけで印をつけ、先の尖った絞りで一つずつ絞る。そのすべてが手作業だ。
かつては普段遣いの和装を絞ることが多かったそう。しかし、現在では和装だけでなく様々なものを絞り、染め上げている。たとえば、今一番人気があるのは帽子だそうだ。
人や環境にやさしいものづくり
手間ひまを惜しまないわけは、「人や環境にやさしいものづくり」を目指しているから。正田さんが使うものは綿や麻、絹、ウールといった天然繊維に、藍や草木といった天然染料。すべてが自然由来のものだ。
だからこそ、自然といかに付き合っていくか大切になる。「調子がいい日もあれば、悪い日もあるんですよ」。たとえば、藍染めの場合、かめの中で染み込ませ、外気にあてて酸化させる。この工程を何度も何度も繰り返すから、その日の気温の差や乾燥の度合いによって、染まり方が変化するのだ。
草木染めはどうだろうか。「草木染めは循環するんです」と正田さんは語る。庭に生えた植物を集め、葉を細かく切り、ぐつぐつと煮えたぎる鍋に入れる、何時間もかけて少しずつ色が出てくる。そして煮出し終わった植物は土に還し、肥料になり、やがて次の植物を育てていく。こうして生まれる草木染めは環境に優しく、循環するシステムをおりなしていく。
オープンファクトリーで自然と向き合う体験を
藍工房正田では、工房を開放するオープンファクトリーの取り組みもおこなわれている。今年は桐生の産業と文化を発信する〈桐生ファッションウィーク〉の期間に合わせて実施された。
期間中は正田さんのレクチャーを受けながら、藍染め・草木染めを体験することができる。「参加した方は、予想できない自然の業に驚きながらも、楽しんでいかれます」。
──大量生産品の溢れる現代だからこそ、自然と自分だけが作りうる唯一の色を見つける。そんな瞬間を楽しみに、工房を訪ねてみてはいかがだろうか。